河合敦『日本史は逆から学べ』
「歴史は<点>じゃなく<線>で捉えると、楽しくなるよ」
歴史が苦手な人が、一度は言われたことがあるアドバイスではないでしょうか?
「昨日は夜更かしをした→今日は授業中、眠かった」というように、大抵の物事には原因があるから結果が生じます。
「歴史を線で捉える」とは、年号や人名を機械的に暗記するのではなく、因果関係を踏まえた上で歴史を流れ(ストーリー)として見るということです。
今回はそのような勉強法の一助となる、河合敦著『日本史は逆から学べ 近現代から原始・古代まで「どうしてそうなった?」でさかのぼる』をご紹介します^ ^
基本情報
河合敦『日本史は逆から学べ 近現代から原始・古代まで「どうしてそうなった?」でさかのぼる』(知恵の森文庫、2017)
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おすすめポイント
例えば中学校であれば、歴史の教科書は猿人の登場から始まり、現代で終わるのが一般的です。
しかし、この本は現代から始まり、
「なぜ、日本は大国アメリカと戦争を始めてしまったのか?(太平洋戦争)」
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「長期化している日中戦争の戦況を打破するため」
↓
「ではなぜ、日本は中国と戦争を始めたのか?」
↓
「満州国だけではなく、日本が中国を侵略し続けたから」
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という風に、因果関係を踏まえながら歴史を遡っていきます。
そのため、歴史上の出来事と出来事が自然と線に繋がっていきます。
なかでも私は、中学歴史でつまづくきっかけになりがちな「中世史」の章をおすすめします^ ^
個人的な見解を言わせてもらえば、幕末以降の近現代史は学校の教科書を読みこむだけで、歴史を線として捉えられるのではないかと思います。
1931年 満州事変→1932年 五・一五事件→1933年 国際連盟脱退というように、重要な出来事が矢継ぎ早に出てくるので、それぞれの関係性を掴みやすいからです。
その一方で中世史は、例えば室町幕府なら、初代尊氏、3代義満、8代義政しかほとんど教科書に登場しないので、空白が生まれてしまって流れが掴みにくいと思います。
「室町時代では義満が金閣作って優雅に暮らしていたのに、いきなり応仁の乱が始まって世の中が乱れた!なんで?」という疑問を持ってしまう人もいるのではないでしょうか。
しかし、この本では因果関係を踏まえながらわかりやすく空白を埋めてくれているので、背景をより理解しやすくなると思います。
年表を暗記したり、参考書の問題を解いたり……という勉強法で伸び悩んでいる人、歴史がつまらないと感じている人はぜひチェックしてみてくださいね☆
エラ・フランシス・サンダース『誰も知らない世界のことわざ』
「ことわざとか慣用句とか四字熟語って、なんで覚えなきゃいけないんですか?何の役に立つんですか?」
国語の授業中、生徒からよく言われる言葉です。
ことわざや慣用句は入試問題として出題されるほか、小説文などの文中に出てくることがあるため、覚えておくと読解に有利になります。
また、作文や会話のなかで自在に操ることが出来れば表現に深みが出ます。
感想文を書いていても、単に「面白い小説でした」などとというより、「心の琴線に触れる小説でした」という表現のほうが目を引きますよね。
そう言われても、まだことわざを勉強する面白さがわからない……という人に紹介したいのが、エラ・フランシス・サンダース著『誰も知らない世界のことわざ』です。
カラフルで見ているだけで楽しい絵がたくさん載っていて、文字数も少ないので、読書が苦手な人でも充分楽しむことが出来ますよ^ ^
基本情報
エド・フランシス・サンダース『誰も知らない世界のことわざ』(創元社、2016)
前田まゆみ訳
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おすすめポイント
カラフルな絵と簡潔な文章で、50を超える世界のことわざを紹介している本です。
日本のことわざと意味が似ているものを見つけると、「住んでいる所は違っても、日々感じたり思ったりしていることは似ているのかな」と嬉しくなりますし、
逆に、使っている言葉の違いに文化の差を感じて興味深く思います。
例えば、うぬぼれている時の表現として、セルビアでは「彼の鼻は、雲をつきやぶっている」ということわざを使うようです。
日本でも自慢するときに「鼻にかける」「小鼻をうごめかす」という慣用句を使いますから、日本でも東ヨーロッパでも、誇らしい時には鼻が高くなるようです。
一方で、価値のわからない人に貴重なものを与える時、ポルトガルでは「ロバにスポンジケーキ」ということわざを使うそうです。
日本の「豚に真珠」「猫に小判」よりちょっとメルヘンな感じがしますね♪
ことわざや慣用句ではないですが、数年前に生徒たちの間で流行っていた米津玄師さんの『Lemon』に「切り分けた果実の片方の様に」という歌詞がありました。
スペインのことわざでも、愛する人のことを「あなたは、私のオレンジの片割れ」と表現するそうです。
また、読んでも全く意味のわからないことわざもあります。
コロンビアやスペインのことわざ「郵便配達員のくつ下のように飲み込まれる」は、恋愛に夢中になっている様子を指すそうです。
面白いですよね^ ^
お友達と、ことわざの意味についてクイズを出し合っても盛り上がりそうです☆
単に世界のことわざを知ることが出来るだけでなく、異なる文化間の共通点や違いを学ぶことが出来る本です。
ぜひ、読んでみてください^ ^!
『世界でいちばん素敵な地球の教室』
理科が好きじゃない……そのような生徒さんにおすすめしているのが、三才ブックスから発行されている『世界でいちばん素敵な○○』シリーズです。
『世界でいちばん素敵な月の教室』、『世界でいちばん素敵な元素の教室』などたくさんのシリーズがあるのですが、どの本も全ページ美しいカラー写真で溢れていて、文字の量や文章の易しさは中高生が充分楽しんで読めるレベルになっています。
今回はその中でも、円城寺守監修『世界でいちばん素敵な地球の教室』をご紹介します♪
基本情報
円城寺守 監修『世界でいちばん素敵な地球の教室』(三才ブックス、2017)
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おすすめポイント
全てのページが地球に関するQ&A方式になっていて、読んでいる人の興味をそそる構成になっています。
一例を挙げると、
「方位磁針はなぜ決まった方向を指すの?」
「地球にはどれくらいの水があるの?」
「北極と南極って、どう違うの?」
「台風の雲はなぜ左巻きなの?」
「石油や石炭はどうやってできたの?」
「地球のほかに人の住めそうな星はあるの?」など……
地層や岩石、地震、海流、雲、化石燃料といった学校の授業で習うキーワードがたくさん登場します。
理科が苦手な子にとっては、科学に興味を持つきっかけになり、
理科が得意な子にとっては、教科書以上の知識を得る楽しみがある本です。
また、大人の方が「知ってるけど、なぜそうなるのかは説明できない……」と思う地球の謎もたくさん解決してくれているので、親子で一緒に楽しむのもオススメですよ♪( ´▽`)
木村伸夫『あなたは死刑判決を下せますか』
学校の定期テストでは頻出分野であり、高校入試やセンター試験でも出題されたことがある、裁判員制度。
裁判員は「6人」で、「刑事事件」の裁判に参加して……とテストでよく出るキーワードは暗記していても、実際に自分が裁判員に選ばれたらどんなことが起きるのだろう?と想像したことがある人は少ないのではないでしょうか?
今回は、この裁判員制度について深掘り出来る小説、木村伸夫『あなたは死刑判決を下せますか 小説・裁判員』をご紹介します☆
基本情報
木村伸夫『あなたは死刑判決を下せますか 小説・裁判員』(花伝社2015)
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あらすじ
この小説の中心人物は、高校の社会科の教員である中村寅太です。
(自分が通う学校の社会の先生を想像しながら読むと感情移入しやすいかもしれませんね^ ^)
中村先生は、裁判員制度を扱う授業中に生徒から「人は、本当に間違いなく、人を裁くことができるんですか?」と質問をされますが、うまく答えることが出来ませんでした。
そこから裁判員制度について勉強を進めているうちに、中村先生は実際に裁判員に選ばれ、殺人事件の刑事裁判に参加することになります。
その裁判では、死刑が求刑されることが予想されながらも、被告人は自分の犯行を否認しており、さらに目撃者もおらず、決定打となり得るような証拠もありません。
裁判員たちはそのような状況下で、被告が有罪なのか無罪なのか、また有罪ならばどのような刑にするのかを決めなければならないのです。
しかも、与えられた時間はたったの5日間です。
中村先生とほかの5人の裁判員は、人を裁く重圧に押しつぶされそうになりながら、裁判員としての責務を果たすべく裁判に臨むのですが、最後には驚くような結末が待っていたのです。
おすすめポイント
タイトルには「小説」とありますが、文章の装飾が少なく、小説というより教科書のような文体です。
その分、小説が苦手な人でも読みやすいかもしれません。
ただ、読む前に、この小説は「読んだ人が裁判員制度に反対意見を持ってしまうストーリー展開になっている」ということを踏まえておいて欲しいと思います。
この小説をおすすめはしていますが、中高生の意見を誘導することはこのブログの本意ではありません。
この小説も含めてたくさんの情報に触れて、自分の頭でたくさん考えて、自分なりの意見を持って欲しいと思います。
読書感想文のポイント
この小説には裁判員制度の問題点がたくさん取り上げられているので、それについて自分の意見をまとめると良いと思います。
この小説から読み取れる問題について、一部を例として挙げておきます。
1、「健全な社会常識」「市民感覚」とは何か
裁判員制度は、「健全な社会常識」や「市民感覚」を裁判に取り入れるために創設されたとされています。
ずっと法律の世界で生きてきた裁判官と、一般の人々の感覚の「ズレ」を解消するというわけです。
確かに、テレビなどで刑事裁判のニュースを見ていて、「こんなに凶悪な犯罪を犯したのに、刑が軽すぎじゃないか?」と憤慨した経験がある人は多いと思います。
ただ、全ての人に共通する「常識」や「市民感覚」というのは本当に存在するのでしょうか?
年齢や性別、職業、住んでいる所、普段マスメディアやインターネットを通して得ている情報の種類の違いなどで「常識」というのは変わってくるのではないでしょうか?
自分なりに考えをまとめてみましょう。
2、裁判員の精神的負担が大きい
裁判員は、人を裁くという重責に加え、遺体や凄惨な事件現場の写真を検証しなければならない場合もあります。
しかも、裁判に関する厳しい守秘義務があり、苦しい心の内を誰にも話すことが出来ず、1人で抱え込まなければなりません。
実際に、それによってPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症してしまった裁判員もいらっしゃるそうです。
私自身もこの小説を読むまで想像もしていなかったことですが、自分は被告人を無罪だと思っていても、裁判官や他の裁判員との評議において多数決で有罪と決まれば、自分は無罪だと思っていても刑罰を決める話し合いに参加しなければなりません。
自分は無罪だと思っているのに刑罰を決めなければならないというのは、苦しい葛藤なのではないでしょうか。
3、裁判期間が短い
裁判員裁判は、仕事や学校を長期間休めない裁判員の負担を軽減するために、数日間のうちに迅速に行われます。
小説の中では、その性急さが「スケジュール裁判」という言葉で表現されていました。
しかし、法律のプロではない裁判員が、たった数日間のうちに見聞きしたことだけを参考に、本当に的確な判断をすることが出来るのでしょうか?
しかも、もしも判断を誤って冤罪が起きてしまえば、1人の人生を大きく狂わせてしまうのです。
この記事を読んでくれている皆さんも、 もしかしたら数年後には裁判員に選ばれるかもしれません。
(実際の確率は、1年で3500分の1のようですが、宝くじに当たるよりは有り得そうです)
この他にもどのような問題点があるか、またそれをどのように解決していけば良いか、自分なりに考える良いきっかけにしてください。